
3Dプリンターと樹脂切削加工の違いとは?
3Dプリンタと樹脂切削加工の違いについてお話します。
そんなの工法の違いだよ!っといってしまえばその通りですが、ではどっちがお客様に適してる?となると、樹脂加工の試作屋さんにご相談されると思います。
しかし・・・両方もってるならいざしらず、どちらか一方の加工機のみをお持ちの試作屋さんでは、手持ちの加工方法しかご提案はできないかもしれませんね。
実際、どの工法が良いかなんて、お客様からすれば「必要なモノが手に入ればこだわりはない」となるかもしれませんが、知っておいて損はないと思う試作屋の本音をお話します。
3Dプリンタについて

弊社の3Dプリンターは光造形
3Dプリンターのメリット
3Dプリンターのメリットからお話しますね。
世に3Dプリンターと言われるモノが出て、すでに20年以上になります。ですが、ここ5年くらいで、いっきに裾野が広がり、一般に認知されるようになった感はあります。また、3Dプリンターといっても、紛体造形から光造形、一般的なFDMと工法も様々ありますが長くなるので詳しくは割愛します。(ggってください!)
だれでもできる
一概には言えませんが、試作の垣根を下げたことは間違いないでしょう。機械任せで加工ができるという事は、ある意味だれでも部品を作れる世界を作ったといえます。複雑な形状が得意
また、複雑な形状であればあるほど、機械まかせにできるメリットが大きくなります。例えば人体等の有機的な形状や、内側が空洞になってるようなアンダー形状でも製作できます。また、高さがあり積み上げが可能な加工ほど、3Dプリンターのメリットが高いといえるでしょう。逆に薄っぺらい形状の場合、あまりメリットはありません。
複雑な形状ほど得意!
3Dプリンターのデメリット
3Dプリンターのデメリットですが、一時期は万能な機械のような言われ方もされた事もありましたが、はっきりいって万能な機械ではありません!表面が階段状になる
まず、なんといっても3Dプリンタはご存じの通り積層方式なので制作物の表面が階段状になるので、きれいな面を必要とする場合、磨き等の後工程が必要となります。まあ、これはみなさん理解されて使われていると思います。最近は、積層ピッチがさらに細かくなり、目立ちにくくなってきていますが、積層方法であればどんな工法でも避けて通れません。
また、積層なので往々にして、もろい傾向があるので、落としたら割れるなんてことも多いと思います。
あ、ちなみに金属積層は別ですよー。あくまで樹脂の積層のお話です。
寸法精度が出ない
具体的には0.01台の公差は出ないので、設計モデルではなく、カバー等の寸法公差が厳しくない部品の試作のほうが向いていると言えますね。0.01の世界は出ない!
素材が限定される。
どうしても、積層の場合、樹脂の材質が限定される傾向があります。最近は、FDM方式で、対応できる樹脂が増えてきていますが、切削加工ほどの対応幅ではありません。あれ?デメリットがいっぱい出てきますね。でもまあ、このデメリットを考慮しても、だれでもカタチを作れる事は魅力だと思います。
切削加工について
切削加工のメリット
では次、切削加工についてお話します。
切削加工は昔からあるので、今更かもしれませんが、おさらいすると、金属、樹脂などのブロック(塊)をドリルなどの工具で削り取っていく工法のことを言います。で、そのドリルの動きをコンピュータ制御したものが、マシニングセンターやNC旋盤と言われるような工作機械ですね。
仕上がりの良さ
まずはなんといっても仕上がりの綺麗さ、圧倒的な寸法精度と素材の選択の幅が広い事と挙げられます。つまり、精度含め、より的確な検証が必要な試作部品は切削が多いといえるかもしれません。切削加工だけでもこの写真のような仕上がりになります。
大型のモデルも可能
また、大型の切削加工機をもっている会社も多く、3Dプリンターでは対応の難しい大型の試作部品も切削では対応可能です。(一部大型の3Dプリンターもありますが、高額でまだ導入された会社さんはあまり見ませんね・・・)寸法精度が高い
切削加工では、0.01台の寸法公差も対応可能です。ですが、ある程度の技術力が問われます。切削加工のデメリット
技術力が問われる
では次、切削加工のデメリットコンピュータ制御とはいえ、そのプログラミング含め、技術力が必要となり、簡単に出来るものではありません。最近はフリーのCAD/CAMや卓上の工作機械等出てはいますが、それでも3Dプリンターのような手軽さはありません。腰を据えて技術を会得する時間が必要になります。
加工費がけっこう掛かる
また、工作機械の金額も高い傾向にあり、試作屋、加工屋にとって複雑な形状を加工する5軸加工機などは、技術的にも金額的にも、軽い気持ちで手を出せるものではありません。つまり、技術的付加価値を考慮すると、3Dプリンターに比べて若干高額になる傾向があります。複雑な形状は分割が必要
切削加工では3Dプリンタと違い、一気に積み上げることはできません。箱のような中が空洞の形状では一度、形をバラバラにしてそれぞれ加工。後程、各パーツを接着などして組み立てる必要があります。また、通常、工具の長さ以上の深さがある形状だと、加工ができなくなるのでこの場合も分割になりますね。特殊な工具を除けば工具の長さもだいたい10cmくらいが限度といえるかもしれません。で、結局どっちがいいの?
おさらいしてみましょう。
私達加工会社の目線ではなく、お客様の目線で考えた場合、次のようになります。
●複雑な形状である程度高さがあり、曲面の多い部品をなるべく安く、カタチをみたい。⇒3Dプリンタ
●繊細な寸法精度が必要とされる部品であまり高さがない形状の試作⇒切削加工
この中で注目する点として、高さが挙げられます。具体的に言うと高さがあまりない、へらべったいカタチの部品を作るなら、3Dプリンターなどの造形はかえって高くつきます。切削加工で、ガンガン削ったほうが早いんです。

薄っぺらい形状の場合、3Dプリンタより切削の方が早い
まあ、その時々の形状にもよるので一概には言えないのであくまでも目安としてとらえてください。
以上、3Dプリンターと樹脂加工の違いでした。3Dプリンターって最近よく耳にしますが、あくまでも道具なので、万能な機械ではありません。その時々で最適な工法があります。
で、どの工法で加工するかは、ご自分で考えるのも手ですが、ぜひ私達加工の会社に聞いてみてください。もしかしたら、以外な答えが返ってくるかもしれませんよ(良い意味で)!
以上、尾崎でした。